言いたいことは5文字にまとめよ

日本語では四字熟語が好まれる。

小学校の国語の試験に「□肉■食」の□と■を埋めよ、なんて問題が出ることは平成教育委員会を見ていても窺い知る事ができる。焼肉定食と答えておきます、定番の寒いネタですが。このように、表記上のマジックナンバーは「4」だ。一方、発音する音でいえば、俳句や短歌は「5」と「7」であり、単純ではない。

漢字圏全体ではどうだろう。漢詩、こちらは自分に素養が全くないのでWikiの受け売りだが、漢詩では「4」も「5」も「7」も使われるようだが、数を固定するというアイデアは普遍的のようである。

認知心理学は西欧の学問と言うわけではないが、マジックナンバー7という考え方を提唱したのは間違いなく英語圏の人であった。なんでも7つ以下にまとめると据わりがいい。覚えてもらえる。議論の場では、言いたいことを5語で言え、なんて無茶ぶりで相手を瞬間黙らせる人も見たことがあるが、確かに7以下。

仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌、南総里美八犬伝の「8」。視覚的には8角形は安心感をもたらすが、覚えるにはちょっと多いと確かに実感する。

枕が長くなったが、今日読んだ2冊のビジネス書が偶然両方とも5文字でエッセンスを示していた。DELTAとSPICEだ。両方5文字。三角形も香辛料も内容には全然関係無い。単に語呂合わせ。5つのキーワードの頭文字を繋げてDELTAとSPICEである。だけど今後その本が話題に出るとき、やっぱりDELTAだSPICEだと語られるのであろう。こういう語呂合わせの良し悪しだけで本として記憶に残るかどうかが決まるわけではないが、記憶に残る効果を確信しているからこそ、著者さん達も使うのだ。

DELTAは、「分析力を駆使する企業 発展の五段階」でのData, Enterprise, Leadership, Target, Analysisの5語。大企業向けに分析力を育て定着させてゆく手順を示す。本としての構成もそこで説明される内容もPlan, Do, Seeのような完成された枠組みにきっちり合わせて構造化されているが、その枠で支えられるはずの内臓とか筋肉がいまいち見えてこない。企業に分析屋ばっかり増えて権限が与えられるというのは、MBAを出たばっかりの理屈っぽいヤな奴を経営陣が偏重するあまり、数字だけ一人歩きして既存事業は切り売りされ長期安定低落のものばかり残り、イノベーションの芽が全部摘まれるという、どこでも見られる景色が浮かんでくる。分析をする人達も必要であり、武器にもなるし、駆使するものいいが、これからはイノベーションですと言ってるそばから、今見えてる数字がすべてです、ってのもアクセルとブレーキを両方踏むようなもんですな、使い古された表現だけど。

この本、残念ながら今のところ平塚市図書館に所蔵されない。所蔵されるのも利用者にはありがたいが、あえて所蔵しないというのもひとつの見識といえる。この本の前作にあたる「分析力を武器とする企業」が現在のところ平塚市中央図書館に所蔵されている。

さて、もう1冊、SPICEのほう、「瞬間説得」は、あまり構造化された構成ではないが、それは砕けた内容には相応しいと感じる。目次を見てもどこをどう読んでいいのか見当もつかずに斜め読みを目論む読者は私も含め困ってしまうが、結論からいえば全部読むことをおすすめするし、拾い読みしても十分に得るところがあるのは、個々のエピソードが秀逸だからだろう。日本でこれをやったら、トラブルが一発で収まるどころか、瞬間炎上になるだろうな、というのもあった。地域性や文化の違いは誰かがどこかでフィルターをかけなければ使える内容にはならないという指摘をするよりは、そういうフィルタは読者が自分で考えるということを前提とすれば、普遍的に使えるメタなアイデアなのではないかと感じた。

私に利益となったのは、人々は成長指向と固定指向(だったよな)に大別され、行動パターンが全く異なるというくだり。最近の自分に思い当たるところあり、考え方と行動を即刻改めることを強く決意いたしました。そして感銘を受けたところ、人種のバイアスを学生に思い出させただけでテストの平均点が変わる実験結果。そしてオバマ当選により、アフリカ系の平均点が大きく改善したこと。人種に限らず社会には色々なバイアスがあるが、その存在と影響をよく知った上で、自分のパフォーマンスをアップする、少なくとも悪化圧力を受けないように防衛をしてゆくことが必要なのだと、強く瞬間説得されてしまいました。

単純性(Simplicity),私的利益感(Perceived self-interest),意外性(Incongruity),自信(Conidence),共感(Empathy)でSPICEというが、SCだけ決まってて、5文字だとSPICEかな、説得にはスパイスが必要なんだよ、って感じでSympathyのかわりにEmpathyにして、Iを選び、Pを無理やりこれにした、ってのはあまりにうがった見方だろうか???

この四文字熟語と、英語5文字の組み合わせ、しばらく試してみたい。オマージュですので。パクりじゃなくて。