人情話がウケるのは人情喪失と裏表

シンデレラコンプレックスというのは単に白馬に乗った王子様が自分を迎えに来てくれるのを待つ心理のことだと思っていたのだが、今あらためて調べてみると、現在は少々複雑になっているようで、独立と依存の二面性をもつ時期があるという。

シンデレラストーリーも古典的でナイーブな構図のものより、キャリアと恋のアンビバレンツという図式の方が、ウケる、ということは当事者ならぬオサーンにも容易に想像はつく。

人気シリーズ「みをつくし料理帖」は最新作「心星ひとつ」でそうしたアンビバレンツなシンデレラストーリーに大きく舵を切った。なんて評論家のような上から目線で的を射てんだかどうだかわからんような感想をオイラが言ったところで面白くもなんともないのだが、そもそも女性をターゲットに女性が好むであろうスタイルで書かれた(だよね)作品を、そのターゲットから思いっきり外れたオサーンがオモロイなタカマルよ~っ読んでんだから、何やら想定外の歪んだ読み方がなされていると考えないほうが不思議でしょうな。

いや、少なくとも私の場合、料理物として楽しんでいるにすぎない。食べる物が人を形作り、健やかにもし、癒し、幸福にする。料理と食材の話をオマケとしてでなく正面からがっぷり取り組んでいるところが大好きなのである。

さて、複雑系シンデレラ譚としては、この澪つくしと、NHK土曜時代劇「咲くやこの花」の百人一首名人と父のあだ討ち本懐の浪人の恋バナとが、私の脳内で勝手にオーバーラップしている。武家として復権したものの家督を弟に譲り自由の身となって江戸に戻ってきた深堂由良の姿が、澪つくしのヒロイン澪の想い人小松原こと御膳奉行小野寺数馬に重なるのだ。身分違いの壁を乗り越えヒロインの夢をかなえる男としてである。

御膳奉行という職が実在したとは知らなかった、ですが。

そしてみをつくしの教訓。二択が向こうからやってきたら、とりあえずスルーして、他の選択肢を自分でこさえること。恋バナも、お武家と医者の対決と見せかけて、実は今行方不明のあの人に、という大団円を勝手に予想させていただきました。

ちなみに、高田郁「みをつくし料理帖」(角川春樹事務所時代小説文庫)最新刊まで6巻すべてが平塚市図書館に所蔵されます。

  1. 八朔の雪 (2009年)
  2. 花散らしの雨 (2009年)
  3. 想い雲 (2010年)
  4. 今朝の春 (2010年)
  5. 小夜しぐれ (2011年)
  6. 心星ひとつ (2011年)

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