アドバイスも鮮度が命

東日本大震災後の復興のために、世界的コンサルティングファームのマッキンゼーが音頭を取り、世界の、各界著名人にアドバイスを求めて出来上がった本。「日本の未来について話そう」はそのように演出されているのだが、読んでみると必ずしもそうではない。

7月出版ということになっているが、編集は5月であり、東日本大震災に言及している論文の数は意外にも多くはない。要するに、本が完成しつつあった段階で大震災が起こり、さすがにそのまま出版するわけにもゆかないから、幾人かの寄稿者に再考を求め、震災後対応にした、というところだと考える。

貴重なご意見であることは間違いない。ただ、総じて、グローバルで行け、ガラパゴスは駄目だ、と言っておきながら、書いていただいているのがなんだかんだで親日派ばかり。ドライにこき下ろす論調もあっていいのだが、無い、というのは東日本大震災を受けてお手柔らかになっているのか。さらに、もしドラの(元AKB48運営に携わっていたとされる)岩崎夏海氏がドラッカーにからめて「生き方のリーダー」として日本の役割を提言されている。内容は、なるほど、である。だけど、ここに岩崎夏海さんというのは、この本が日本向けの本であることを明確に示している。これを海外同時発売というのだが、となると、知日派に日本の最新の話題を提供する本、という結構ガラパゴスなポジションになるのじゃないのかなあと考えるのだ。

それでも、貴重なアドバイス集であることに変わりはない。

だが、東日本大震災で、日本人のメンタリティは大きく変わった。さらに、アンディサマーズの言葉ではないが、復興のために資金が必要のため、日本は貧しくなったことは間違いない。今まで出来ると思われたことが、体力的に無理、ということにもなる。

要するに、3月11日を境に、作戦は全部練り直し、なのである。

そういう意味では、この本の企画はボツ、というのがナイーブな流れだと思うのだが、そこは商魂逞しい方々であり、さらに寄稿いただいた各位にも失礼となるから、前述のように、部分的にお化粧直しをして、新しいように演出して、駄目な日本の処方箋のはずだった企画を、激甚災害後の復興計画として再出発させた、この錬金術は流石である。いや、すごい。さらに、海外でも復興関連を提言する格調高いタイムリーな日本論として売れるのだから、二度おいしい。商売人魂すごすぎですな。

以上、なんだかんだと勝手な御託を並べましたが、諸兄におかれましては、ご一読を強くお奨め申し上げる次第です。

コメントは受け付けていません。